東京ゼロエミ住宅「水準A」の基準とは?UA値・省エネ性能を設計者向けに解説

NEW 2026.10.29 東京ゼロエミ住宅

このコラムをざっくり解説

東京ゼロエミ住宅の「水準A」は、水準A・B・Cの中で最も高い省エネ性能を求める区分です。2026年時点の基準では、戸建住宅・集合住宅等ともにUA値0.35以下が必要で、一次エネルギー消費性能は戸建住宅でBEI_ZE0.55以下、集合住宅等では0.60以下が求められます。ただし、UA値だけを満たせば水準Aを取得できるわけではありません。設備の省エネ性能や再生可能エネルギー利用設備など、東京ゼロエミ住宅独自の認証要件も確認する必要があります。弊社で計算を行う際にも、水準Aを目指す案件は実施設計完了後ではなく、断熱・窓・設備仕様を決める段階から性能を確認することをおすすめしています。

東京ゼロエミ住宅「水準A」はどのくらい高い基準か

東京ゼロエミ住宅には、水準C・水準B・水準Aの3段階があります。その中で最も高い環境性能を求めているのが「水準A」です。東京都は、水準Aについて国が推進するZEH水準を大幅に上回る断熱性能と、省エネ基準に対して45%削減となる一次エネルギー消費性能を求める水準として位置付けています。

現在の基準は、2024年10月の制度改正で従来の水準1~3から水準C~Aへ再編されたものです。従来の最高位だった水準3を水準Bとし、さらに高い性能として新たに水準Aが設定されました。水準Aは、単純に「ZEHより少し断熱性能が高い住宅」という位置付けではなく、東京ゼロエミ住宅の中でもかなり高い断熱・省エネ性能を求める区分と考えた方が分かりやすいです。

弊社へも「せっかく東京ゼロエミ住宅を取得するなら水準Aを狙いたい」というご相談があります。ただ、水準Aは設計が完成してから計算し、数値が足りなければ少し仕様を上げればよい、という進め方だと修正範囲が大きくなることがあります。最初から水準Aを取得する予定であれば、実施設計途中で一度計算しておく方が進めやすくなります。

水準AのUA値は0.35以下

水準Aで最も分かりやすい基準がUA値です。現在の東京ゼロエミ住宅では、戸建住宅・集合住宅等ともに、水準AはUA値0.35W/㎡・K以下が求められます。

UA値は外皮平均熱貫流率のことで、住宅内部から外部へどれだけ熱が逃げやすいかを示す数値です。数値が小さいほど断熱性能が高い住宅になります。東京23区などの6地域で一般的なZEH水準はUA値0.60以下ですから、水準Aの0.35以下はかなり高い断熱性能です。

各水準を比較すると違いが分かりやすくなります。

水準UA値
水準C0.60以下
水準B0.46以下
水準A0.35以下

弊社で水準Aの計算を行う際も、まず外皮計算を行い、現在の断熱材・サッシ・玄関ドアなどでUA値0.35以下に入るかを確認します。ここで0.36や0.37になった場合、どこを変更すれば効率よく0.35以下へ下げられるかを検討します。

UA値0.35は断熱材だけ厚くすれば達成できるわけではない

水準Aを目指すとき、「断熱材を厚くすればUA値0.35になりますか」と相談されることがあります。もちろん断熱材の性能を上げることは有効ですが、UA値は外壁だけで決まるものではありません。

外壁、屋根・天井、床・基礎、窓、玄関ドアなど、住宅の外皮全体から逃げる熱を計算してUA値を求めます。そのため外壁だけ断熱性能を上げても、大きな窓が多い住宅や開口部性能が低い住宅では思ったほどUA値が下がらないことがあります。

弊社で水準Aを検討する場合も、計算結果を見ながら「外壁を強化するのか」「屋根・天井側を上げるのか」「窓性能を上げるのか」を確認します。住宅によって熱損失の大きい部分が違うため、一律に「この断熱材を○mm入れれば水準A」とは言えません。

設計者としては、建物形状と開口部がおおむね決まった段階で一度外皮計算を行っておくと、その後の仕様決定がかなり楽になります。実施設計が終わってからUA値不足が分かると、矩計図、建具表、仕上表、見積もりまで変更になるためです。

水準AではUA値だけでなくBEI_ZEも重要

東京ゼロエミ住宅でよくある誤解が、「UA値0.35以下なら水準A」という考え方です。水準Aでは断熱性能だけでなく、設備を含めた一次エネルギー消費性能も基準を満たす必要があります。

2026年時点の水準Aでは、戸建住宅についてBEI_ZE0.55以下、集合住宅等についてBEI_ZE0.60以下が求められます。

住宅の種類水準AのUA値水準AのBEI_ZE
戸建住宅0.35以下0.55以下
集合住宅等0.35以下0.60以下

BEIは基準となる一次エネルギー消費量に対して、設計した住宅の一次エネルギー消費量がどの程度なのかを示す指標です。数値が小さいほど省エネルギー性能が高くなります。

東京ゼロエミ住宅で使用するBEI_ZEは、通常のBEIと完全に同じ考え方ではありません。一次エネルギー消費量を算定する際、太陽光発電設備による削減分を含めずに評価します。つまり「太陽光発電をたくさん載せてBEIを下げ、水準Aへ適合させる」という方法ではなく、住宅そのものの設備省エネ性能を高める必要があります。
ここは水準Aを設計するときにかなり重要なポイントです。

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BEI_ZE0.55を満たすには設備仕様も早めに決める

戸建住宅で水準Aを取得する場合、BEI_ZE0.55以下ですから、基準一次エネルギー消費量に対して45%以上削減する性能が必要になります。東京都も水準Aを、省エネ基準より45%削減できる水準として説明しています。

計算では暖冷房、換気、給湯、照明などの設備条件が関係します。そのため、外皮性能だけを高くしておけば必ず水準Aになるわけではありません。

弊社で計算を行っていると、UA値は0.35以下に収まっているのに、BEI_ZEが0.55を少し超えてしまうケースもあります。この場合は、どの設備が一次エネルギー消費量を押し上げているのかを確認します。暖冷房機器、換気方式、給湯設備、照明設備などを一つずつ見て、設計条件やコストと合わせながら調整していきます。

そのため、水準Aを取得する案件では「断熱仕様を決める担当」と「設備を決める担当」が完全に別々に動かない方がよいです。外皮計算だけ先に終わっていても、給湯器や換気設備が最後まで未定だとBEI_ZEを確定できません。

UA値を0.35まで上げるとBEI_ZEにも有利になる

UA値とBEI_ZEは別々の基準ですが、まったく無関係というわけではありません。断熱性能を高めれば暖房・冷房に必要となるエネルギーを減らせるため、一次エネルギー消費性能にも有利に働きます。

東京都が水準Aを設定する際に行ったモデル住宅の検討でも、UA値0.35程度まで断熱性能を高めたうえで、高効率な暖冷房・換気・給湯・照明設備を組み合わせ、戸建住宅のBEI_ZE0.55以下を実現できることが確認されています。

ただし、UA値が0.35なら自動的にBEI_ZE0.55になるわけではありません。給湯設備や空調などの条件によって結果は変わります。そのため弊社では、水準A案件については「UA値をクリアしたから終わり」ではなく、外皮と一次エネルギーをセットで確認しています。

水準Aは仕様基準では取得できません

現在の東京ゼロエミ住宅には、戸建住宅の水準Cについて比較的簡単に適合を確認できる仕様規定があります。しかし、水準A・水準Bは性能規定による評価となり、計算によって性能を確認する必要があります。東京都の制度改正でも、水準A・Bは性能規定のみとされています。

つまり、水準Aについては「この断熱材、この窓、この給湯器を使えば自動的に水準A」という仕様表だけで認証を取るものではありません。実際の住宅形状、床面積、外皮面積、窓、設備などを入力して、UA値とBEI_ZEを確認します。

同じ断熱材・同じサッシを使用していても、建物形状や窓面積が違えばUA値は変わります。同じ設備を入れていても、住宅の条件が変われば一次エネルギー消費量も変わります。
水準Aほど、標準仕様だけで判断せず、案件ごとに計算して確認することが重要です。

太陽光発電設備などの再エネ設備も認証要件になる

現在の東京ゼロエミ住宅では、一定の例外を除き、太陽光発電設備などの再生可能エネルギー利用設備の設置も認証要件になっています。対象となる設備には、太陽光発電のほか、太陽熱利用設備や地中熱利用設備があります。屋根面積が狭いなど、物理的に設置が難しい住宅については例外規定があります。

ここで少し分かりにくいのが、「BEI_ZEの計算には太陽光を含めないのに、認証では太陽光等の設置が求められる」という点です。

考え方としては、まず断熱と高効率設備によって住宅自体の消費エネルギーを削減し、そのうえで再生可能エネルギーも導入するという仕組みです。太陽光発電によって計算上だけ水準Aへ引き上げる制度ではありません。

設計者としては、水準Aの検討と同時に屋根形状や太陽光発電設備の配置も確認しておく必要があります。都市部では斜線制限などによって屋根形状が複雑になる住宅も多いため、設計終盤になってから太陽光を載せようとすると配置に困ることがあります。

水準Aを目指すなら窓は早い段階で決める

水準Aの計算をしていて、設計への影響が大きいと感じるのが窓です。窓は外壁などと比較すると熱が逃げやすいため、開口部の面積や性能によってUA値が大きく変わることがあります。

設計士の方から計算依頼をいただいた時点で、平面・立面は完成しているものの「サッシはまだ未定」というケースがあります。水準C程度であれば後から調整できる場合もありますが、UA値0.35以下を狙う水準Aでは、サッシ性能が計算結果に大きく影響することがあります。

そのため水準Aを予定している場合は、窓の大きさを決める段階からある程度のサッシ性能を想定しておくことをおすすめしています。

これは「窓を小さくした方がよい」という意味ではありません。大きな開口を取りたいのであれば、その分サッシやガラスの性能を上げる、ほかの外皮性能を強化するといった調整ができます。デザインを諦めるのではなく、早い段階で計算し、どこに性能を持たせるか決めるのがポイントです。

水準Aを狙うなら実施設計の途中で一度計算した方がよい

弊社で東京ゼロエミ住宅のご相談を受ける中で、水準Aについて特におすすめしているのが「申請直前ではなく、一度早めに計算する」ことです。

設計確認申請の直前になって初めて計算し、UA値0.38、BEI_ZE0.58だった場合、そこから断熱・窓・設備を変更しなければなりません。設計図だけならまだ修正できますが、すでに施主との仕様打ち合わせや見積もりまで終わっていると、変更の影響がかなり広がります。

理想としては、平面・立面・断面がおおむね決まり、断熱と窓の方向性が見えたところで一度外皮計算を行います。その後、空調、換気、給湯などの設備仕様がまとまった段階で一次エネルギー消費量を確認し、水準Aへ適合できる仕様を固めてから設計確認申請用の図書をまとめます。

水準Aは基準値が高い分、設計の最後に帳尻を合わせるより、計算結果を設計へ戻しながら進めた方が圧倒的に調整しやすくなります。

水準Aでよくあるのは「計算上はクリアしているのに図面が違う」ケース

東京ゼロエミ住宅の申請代行では、UA値やBEI_ZEだけではなく、計算に使った仕様が図面へ記載されているかも確認します。

例えば外皮計算では高性能サッシを使用してUA値0.35をクリアしているのに、建具表は変更前のサッシのまま。計算では断熱材を厚くしているのに矩計図へ反映されていない。一次エネルギー計算では高効率給湯器を入力しているのに設備図では別機種になっている、といったケースです。

計算結果だけ水準Aをクリアしていても、その仕様で設計されていることが確認できなければ設計確認はスムーズに進みません。

弊社では計算結果を出すだけではなく、最終的にどの仕様で基準へ適合させるのかを整理し、申請図面と計算条件を合わせていきます。この作業を申請直前にまとめて行うと修正が増えるため、仕様変更があったら計算担当にも共有しておくことが重要です。

水準Aを取得するなら完了検査まで同じ仕様を維持する

水準Aとして設計確認書が交付されても、それだけで東京ゼロエミ住宅の認証取得が完了するわけではありません。工事完成後には工事完了検査を受け、設計確認を受けた内容どおりに施工されていることを確認してもらいます。

そのため施工中に断熱材、サッシ、給湯器、空調設備などを変更する場合には注意が必要です。
特に水準Aは基準値に対する余裕が小さい案件もあるため、「ほぼ同じ性能だから大丈夫だろう」と現場判断で設備を変更すると、UA値やBEI_ZEが基準を超える可能性があります。仕様変更を行う場合は、施工する前に省エネ計算への影響を確認しておく方が安全です。

東京ゼロエミ住宅では設計確認から完了検査まで同じ認証条件をつなげる必要があります。水準Aを取得するのであれば、計算担当だけでなく、設計担当・現場監督・設備業者にも認証上重要な仕様を共有しておくことをおすすめしています。

水準A・B・Cで迷ったら、まず現在の設計を計算してみる

「水準Aを狙うべきか、水準Bでもよいのか分からない」という相談もあります。この場合、最初から仕様を大きく変更するのではなく、まず現在予定している住宅仕様で計算してみる方法があります。

例えば計算した結果がUA値0.37であれば、少し断熱や窓を調整すれば水準Aが見えてきます。一方、UA値0.55で設備も一般的な仕様の場合、水準Aまで引き上げるには断熱・窓・設備を大きく見直す可能性があります。

水準Aへ上げるためのコストと、得られる助成額や住宅性能を比較して、どの水準を選択するか判断した方が設計しやすくなります。

そのため弊社では、「水準Aで申請すると決まってから計算する」だけでなく、どの水準まで狙えるのかを判断するための省エネ計算として弊社にご相談いただくこともできます。

東京ゼロエミ住宅「水準A」はUA値とBEI_ZEの両方から設計するのがおススメ

東京ゼロエミ住宅の水準Aについて、設計者がまず押さえておきたい数字は、UA値0.35以下と、戸建住宅でBEI_ZE0.55以下という2つです。集合住宅等の場合はUA値0.35以下、BEI_ZE0.60以下となります。水準A・Bは仕様規定ではなく性能計算によって適合を確認するため、実際の建物ごとに計算が必要です。

ただし、水準Aを取得するために重要なのは、この数字だけを覚えることではありません。外皮、窓、設備、再エネ設備を一つの住宅として考え、設計初期からバランスを取ることです。

UA値だけ先に追い込み、最後に設備計算をしたらBEI_ZEが届かない。計算では適合しているのに図面へ仕様が反映されていない。設計確認は通ったものの、現場で設備を変更して完了検査前に再調整が必要になる。こうした手戻りを防ぐには、計算・設計・施工を別々に進めないことがポイントです。

水準Aを予定している案件ほど、早い段階から省エネ計算を設計へ組み込むことをおすすめします。

東京ゼロエミ住宅「水準A」の省エネ計算・申請代行をご相談ください

東京ゼロエミ住宅の水準Aを取得したいものの、「現在の断熱仕様でUA値0.35以下になるか分からない」「BEI_ZE0.55を満たすためにどの設備を変更すればよいか分からない」「水準A・Bのどちらで申請するか迷っている」という段階でもご相談いただけます。

当社では、東京ゼロエミ住宅の省エネ計算から、水準A・B・Cの性能確認、基準を満たすための仕様検討、設計確認に必要な申請図書の作成まで対応しています。すでに設計が進んでいる案件についても、現在の図面と仕様からUA値・BEI_ZEを確認し、どの部分を調整すれば目標水準へ近づけるか整理できます。

水準Aは高い性能が求められるため、確認申請や設計確認の直前に計算を始めるより、断熱・サッシ・設備を決める段階から確認した方が設計変更を減らせます。「まず水準Aを取得できそうか確認したい」「省エネ計算だけ依頼したい」といったご相談でも問題ありません。 東京ゼロエミ住宅の設計を進めている方は、現在お持ちの図面からお気軽にご相談ください。

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