このコラムをざっくり解説
東京ゼロエミ住宅には、水準C・水準B・水準Aの3段階があり、断熱性能を示すUA値、一次エネルギー消費性能、助成額がそれぞれ異なります。性能規定の場合、UA値は水準Cが0.60以下、水準Bが0.46以下、水準Aが0.35以下です。戸建住宅のBEIZEは、水準Cが0.70以下、水準Bが0.60以下、水準Aが0.55以下となり、上位水準ほど高い省エネ性能が求められます。令和8年度の住宅建設費に対する助成額は、戸建住宅で水準C40万円、水準B160万円、水準A240万円です。本記事では、2026年度の制度をもとに3水準の違いと、設計時に確認したいポイントを整理します。
東京ゼロエミ住宅の水準A・B・Cは何が違う?
東京ゼロエミ住宅は、高い断熱性能の断熱材や窓、高効率な設備、再生可能エネルギー設備などを取り入れた住宅を東京都独自の基準で認証する制度です。現在は水準C・水準B・水準Aの3段階が設けられており、水準が上がるほど断熱性能と設備の省エネルギー性能に高い基準が設定されています。東京都の説明では、水準Cは「ZEH水準相当」、水準Bは「ZEH水準を上回る」、水準Aは「ZEH水準を大幅に上回る」性能として整理されています。水準によって住宅建設費への助成額も大きく変わるため、設計段階では「どの水準を取得できるか」だけでなく、「上位水準へ変更するために必要な仕様変更費と助成額の差」を確認することが重要です。
2026年度の主な基準を比較すると次のようになります。
| 項目 | 水準C | 水準B | 水準A |
|---|---|---|---|
| UA値 | 0.60以下 | 0.46以下 | 0.35以下 |
| 戸建住宅 BEIZE | 0.70以下 | 0.60以下 | 0.55以下 |
| 集合住宅等 BEIZE | 0.70以下 | 0.65以下 | 0.60以下 |
| 戸建住宅の省エネ基準からの削減率 | 30%以上 | 40%以上 | 45%以上 |
| 集合住宅等の削減率 | 30%以上 | 35%以上 | 40%以上 |
| 戸建住宅の住宅建設費助成 | 40万円/戸 | 160万円/戸 | 240万円/戸 |
| 集合住宅等の住宅建設費助成 | 30万円/戸 | 130万円/戸 | 200万円/戸 |
| 再エネ利用設備 | 原則設置 | 原則設置 | 原則設置 |
令和8年度の助成制度では、都内の新築住宅のうち床面積の合計が2,000㎡未満の戸建住宅・集合住宅等が住宅建設費助成の対象となっています。集合住宅等については全戸が水準C以上であることが条件で、各住戸の認証水準に応じて助成額が決まります。
水準CはZEH水準相当の断熱性能
水準Cは、現在の東京ゼロエミ住宅における基本的な性能区分です。性能規定で評価する場合、UA値は0.60以下、BEIZEは戸建住宅・集合住宅等ともに0.70以下となり、省エネ基準から30%以上の一次エネルギー消費量削減が求められます。UA値0.60以下はZEH水準相当であり、すでにZEH水準を標準仕様としている住宅会社であれば、現在の断熱仕様をベースに検討しやすい水準です。水準Cには一定条件のもとで仕様規定による確認方法も設けられているため、住宅の条件や採用する仕様によっては性能計算とは異なる進め方も選択できます。
令和8年度の住宅建設費助成額は、戸建住宅が1戸40万円、集合住宅等が1戸30万円です。水準B・Aと比較すると助成額は小さくなりますが、上位水準へ変更するための高性能サッシや断熱仕様、設備仕様などの追加費用も抑えやすいため、現在の標準仕様との距離を確認したうえで判断することになります。
水準BはUA値0.46以下で、ZEHを上回る性能
水準BではUA値0.46以下が必要となり、水準Cの0.60以下から断熱性能が一段引き上げられます。東京都は水準Bを「ZEH水準を上回る北海道相当の断熱性能」と説明しており、戸建住宅では省エネ基準から40%以上、集合住宅等では35%以上の一次エネルギー消費量削減が求められます。BEIZEに置き換えると戸建住宅0.60以下、集合住宅等0.65以下です。
実際の設計では、ZEH水準を標準としている住宅をそのまま水準Bへ変更できるとは限りません。窓の熱貫流率、玄関ドア、壁・屋根・床の断熱仕様、開口部面積などによってUA値は変わるため、現在の設計図を使った外皮計算で確認する必要があります。また、断熱性能だけを0.46以下にすれば認証できるわけではなく、冷暖房、換気、給湯、照明などを含めた一次エネルギー消費性能についても基準を満たす必要があります。
令和8年度の住宅建設費助成額は戸建住宅160万円、集合住宅等130万円です。水準Cと比較すると戸建住宅では120万円、集合住宅等では100万円助成額が増えます。そのため、水準C仕様からB仕様へ変更するための追加建築費を算出し、助成額の増加分と比較すると、水準選択の判断材料が整理しやすくなります。
水準AはUA値0.35以下の最上位水準
水準Aは東京ゼロエミ住宅の最上位区分で、UA値0.35以下という高い断熱性能が求められます。戸建住宅ではBEIZE0.55以下、集合住宅等では0.60以下となり、省エネ基準からの削減率は戸建住宅45%以上、集合住宅等40%以上です。東京都では水準Aを「ZEH水準を大幅に上回る断熱性能」と位置付けています。
UA値0.35以下まで性能を高める場合、住宅によっては断熱材を厚くするだけでは到達できません。大きな開口部が多い住宅、外皮面積が大きい住宅、凹凸の多いプランなどでは、窓や玄関ドアの性能向上、断熱仕様の見直しなどを組み合わせる必要があります。さらにBEIZEも戸建住宅0.55以下まで引き下げる必要があるため、給湯器、冷暖房、換気、照明などの設備仕様も計算結果へ影響します。水準Aを想定している案件では、確認申請直前ではなく、間取りや開口部がある程度決まった段階で一度計算しておくと、その後の仕様調整を進めやすくなります。
令和8年度の住宅建設費助成額は戸建住宅240万円、集合住宅等200万円です。水準Bとの差は戸建住宅80万円、集合住宅等70万円、水準Cとの差は戸建住宅200万円、集合住宅等170万円となります。助成額だけを見ると水準Aが有利ですが、水準Aへ到達するための仕様変更費が住宅ごとに異なるため、建築コストと助成額をセットで比較する必要があります。
UA値0.60・0.46・0.35では住宅の断熱仕様が変わる
UA値は外皮平均熱貫流率を表し、住宅内部から壁、屋根、床、窓、ドアなどを通じて外部へ逃げる熱量を外皮面積で割った数値です。数値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高い住宅になります。東京ゼロエミ住宅では水準Cが0.60以下、水準Bが0.46以下、水準Aが0.35以下なので、水準が上がるほど外皮からの熱損失を抑える設計が必要です。
ただし、UA値は「断熱材○mmなら水準B」と単純に決まるものではありません。窓の種類や大きさ、玄関ドア、断熱材の種類・厚さ、屋根・天井・床の断熱方法、建物の形状などをすべて含めて計算します。同じ床面積でも、正方形に近いシンプルな住宅と凹凸が多い住宅では外皮面積が異なり、同じ仕様でもUA値が変わる場合があります。そのため、東京ゼロエミ住宅の水準を決める際には、標準仕様だけで判断せず、実際の図面を使って外皮計算を行うことが重要です。
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BEIZEでは設備を含めた省エネ性能を確認する
東京ゼロエミ住宅ではUA値とあわせてBEIZEを確認します。BEIZEは、住宅の一次エネルギー消費性能を確認するための指標で、東京ゼロエミ住宅では太陽光発電による削減効果を算入せずに評価します。水準Aの戸建住宅ならBEIZE0.55以下、水準Bなら0.60以下、水準Cなら0.70以下が基準です。つまり、太陽光発電設備を大容量設置すれば断熱・設備性能が低くても上位水準になるという仕組みではありません。まず住宅本体と設備によって一定の省エネ性能を確保し、そのうえで再生可能エネルギー設備を導入する制度設計になっています。
そのため、UA値が基準内でもBEIZEが基準を超えていれば希望する水準には適合しません。実務では、高効率エアコン、高効率給湯器、LED照明、換気設備などの仕様を確認しながら計算します。水準A・Bを検討する際には、断熱仕様と設備仕様を別々に決めるのではなく、外皮計算と一次エネルギー消費量計算の両方を確認しながら仕様を決めると手戻りを減らせます。
令和8年度は水準によって助成額が大きく変わる
令和8年度の東京ゼロエミ住宅普及促進事業では、住宅建設費への助成額が水準によって大きく異なります。戸建住宅では水準C40万円、水準B160万円、水準A240万円、集合住宅等では水準C30万円、水準B130万円、水準A200万円です。対象となるのは都内の新築住宅で、床面積の合計が2,000㎡未満のものとされています。令和8年度の交付申請受付期間は2026年4月1日から2027年3月31日までです。
| 水準変更 | 戸建住宅の助成額差 | 集合住宅等の助成額差 |
|---|---|---|
| 水準C → 水準B | +120万円 | +100万円 |
| 水準B → 水準A | +80万円 | +70万円 |
| 水準C → 水準A | +200万円 | +170万円 |
この差額と仕様変更費を比較すると、水準選択を具体的に検討できます。例えば水準CからBへ上げるために必要な窓・断熱材・設備等の追加費用が80万円で、戸建住宅の助成額が120万円増えるのであれば、費用面でも検討しやすくなります。一方、水準BからAへ変更するために大幅な断熱強化が必要となり、助成額差80万円を大きく上回る追加費用が発生する住宅もあります。住宅ごとに条件が異なるため、UA値とBEIZEを試算したうえで比較することがポイントになります。
太陽光発電設備などの再エネ設備も原則必要
現在の東京ゼロエミ住宅では、水準A・B・Cのすべてについて太陽光発電設備などの再生可能エネルギー利用設備を原則設置することが求められています。東京都は2024年10月から新しい水準A・B・Cを導入するとともに、再エネ利用設備の設置を認証要件に加えました。
令和8年度は住宅建設費とは別に、太陽光発電設備、蓄電池、V2Hへの助成も用意されています。太陽光発電設備は3.6kW以下の場合、オール電化住宅で13万円/kW、オール電化以外で12万円/kWとなり、それぞれ上限39万円・36万円です。3.6kW超50kW未満では、オール電化住宅11万円/kW、その他10万円/kWとなっています。機能性PVへの加算も設定されています。
そのため、東京ゼロエミ住宅の補助を検討する際には住宅建設費の40万円・160万円・240万円だけを見るのではなく、太陽光発電設備や蓄電池など、利用できる設備助成を含めて整理すると総事業費を把握しやすくなります。
集合住宅では全住戸を確認する必要がある
東京ゼロエミ住宅は戸建住宅だけでなく集合住宅等も対象です。令和8年度の助成制度では、集合住宅等について全戸が水準C以上であることが条件とされ、各住戸について認証された水準に応じた助成額が適用されます。水準Cなら30万円、水準Bなら130万円、水準Aなら200万円/戸です。
共同住宅の場合、住戸位置や方位、外気に接する面積などによって外皮条件が変わります。中間住戸より角住戸や最上階住戸の方が外皮面積が大きくなり、UA値が不利になるケースもあります。そのため、代表住戸だけを見て建物全体の水準を決めるのではなく、住戸タイプや位置を整理しながら計算を進める必要があります。戸数が多い共同住宅では、各住戸の外皮計算、一次エネルギー消費量計算、図面との整合確認などの作業量も大きくなるため、計算開始前に住戸タイプを整理しておくと進行がスムーズです。
水準を決めるなら、まず現在の仕様を計算すると比較しやすい
水準A・B・Cのどれを採用するか迷っている場合は、現在予定している住宅仕様で一度計算すると判断しやすくなります。例えば現在の設計でUA値0.48、BEIZE0.62だった場合、水準Cには適合しますが、水準Bには少し届きません。この状態から窓や断熱材、給湯設備などを一部変更することでUA値0.46以下、BEIZE0.60以下まで改善できるのであれば、水準Bを検討する余地があります。一方、水準AのUA値0.35以下まで下げるために大幅な仕様変更が必要であれば、水準Bとの建築費差と助成額差を比較して判断できます。
設計が完成してから計算すると、上位水準を希望した際に窓、断熱材、設備、見積書、確認申請図面などをまとめて修正する可能性があります。特に水準Aを検討する住宅では、間取りや開口部がある程度決まった段階で一度計算し、どの程度の性能になっているかを確認しておくと、その後の仕様決定を進めやすくなります。
東京ゼロエミ住宅の水準A・B・Cをまとめて比較
3水準を簡単に整理すると、水準CはZEH水準相当で比較的導入しやすい区分、水準BはUA値0.46以下まで断熱性能を高めた上位区分、水準AはUA値0.35以下と高い設備省エネ性能を求める最上位区分です。助成額も水準が上がるほど大きくなりますが、建築費も同じ割合で増えるとは限りません。現在の標準仕様が水準Bに近い住宅であれば、比較的小さな仕様変更で助成額を増やせる場合があります。一方、水準Aへの到達に大幅な断熱・設備仕様変更が必要な住宅では、追加費用も大きくなります。
| 比較項目 | 水準C | 水準B | 水準A |
|---|---|---|---|
| 性能の位置付け | ZEH水準相当 | ZEH水準を上回る | ZEH水準を大幅に上回る |
| UA値 | 0.60以下 | 0.46以下 | 0.35以下 |
| 戸建BEIZE | 0.70以下 | 0.60以下 | 0.55以下 |
| 集合住宅等BEIZE | 0.70以下 | 0.65以下 | 0.60以下 |
| 戸建助成額 | 40万円 | 160万円 | 240万円 |
| 集合住宅等助成額 | 30万円 | 130万円 | 200万円 |
| 再エネ設備 | 原則設置 | 原則設置 | 原則設置 |
| 設計時の主な確認 | ZEH仕様との整合 | 断熱・設備仕様の強化 | 設計初期から高断熱化を検討 |
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