東京ゼロエミ住宅の省エネ計算とは?水準A・B・Cを満たすための計算方法を解説

2026.09.26 東京ゼロエミ住宅

このコラムをざっくり解説

東京ゼロエミ住宅では、住宅の断熱性能を示すUA値と、暖冷房・換気・給湯・照明などの一次エネルギー消費量を計算し、水準A・B・Cへの適合を確認します。戸建住宅では、水準CがUA値0.60以下・省エネ30%以上、水準Bが0.46以下・40%以上、水準Aが0.35以下・45%以上です。基準に届かない場合は、窓や断熱材、空調、給湯設備などを見直します。設計完成後では変更範囲が大きくなるため、目標水準を早めに決め、設計途中から計算と仕様調整を進めることが重要です。

東京ゼロエミ住宅の申請を検討している設計者から、「通常の省エネ計算と何が違うのか」「ZEH水準を満たしていれば東京ゼロエミ住宅にも適合するのか」「水準A・B・Cは何を計算して判定するのか」といったご相談をいただくことがあります。

東京ゼロエミ住宅では、単に断熱材を厚くしたり、高性能な設備を採用したりすれば認証されるわけではありません。基本となるのは、住宅の断熱性能を示す外皮平均熱貫流率(UA値)と、暖房・冷房・換気・照明・給湯などの設備による一次エネルギー消費量を計算し、希望する水準の基準を満たしているか確認することです。

現在の東京ゼロエミ住宅には水準C・水準B・水準Aの3段階があり、水準が上がるほど高い断熱性能と省エネルギー性能が求められます。2026年度の性能規定では、戸建住宅の場合、水準CはUA値0.60以下かつ国の省エネ基準から30%以上削減、水準BはUA値0.46以下かつ40%以上削減、水準AはUA値0.35以下かつ45%以上削減することが基準です。集合住宅等では設備の削減率が一部異なります。

そのため、東京ゼロエミ住宅の省エネ計算では「計算して基準に入っているか確認する」だけではなく、基準に届かなかった場合に、断熱材、窓、空調、給湯、換気などの仕様をどのように修正するかまで考える必要があります。今回は、その考え方を実務に沿って整理します。

東京ゼロエミ住宅で計算するのは「断熱性能」と「設備の省エネ性能」

東京ゼロエミ住宅の性能規定では、大きく分けて「住宅からどのくらい熱が逃げるか」と「住宅で使用する設備がどの程度エネルギーを消費するか」の2つを評価します。

断熱性能についてはUA値を計算し、設備については国の住宅省エネルギー計算で使用するWEBプログラムなどを利用して一次エネルギー消費量を算定します。東京都の指針でも、設備の省エネルギー性能についてWEBプログラムを介して求めた値を使用して評価する仕組みが定められています。国の住宅の省エネルギー性能評価についても、建築研究所が住宅版エネルギー消費性能計算プログラムや外皮性能計算の算定方法を公開しています。

現在の主な性能基準を整理すると、次のようになります。

水準UA値戸建住宅の省エネ削減率(再エネ除く)集合住宅等の削減率(再エネ除く)
水準C0.60以下30%以上30%以上
水準B0.46以下40%以上35%以上
水準A0.35以下45%以上40%以上

設備性能をBEIの考え方で表すと、戸建住宅では水準CがBEI_ZE 0.70以下、水準Bが0.60以下、水準Aが0.55以下に相当します。つまり水準Aになるほど、基準住宅と比較して一次エネルギー消費量を大幅に削減しなければなりません。

ここで重要なのは、UA値だけを満たしても東京ゼロエミ住宅にはならないという点です。断熱性能と設備の省エネルギー性能の両方を満たし、さらに照明・冷暖房設備等について東京ゼロエミ住宅が定める要件にも適合する必要があります。

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UA値とは?東京ゼロエミ住宅の断熱性能を判断する数値

UA値とは「外皮平均熱貫流率」のことで、住宅内部から外部へどのくらい熱が逃げやすいかを表す数値です。単位はW/㎡・Kで、基本的には数値が小さいほど断熱性能が高い住宅になります。

計算では、屋根や天井、外壁、床、基礎、窓、玄関ドアなど、外気等に接する住宅の外皮について熱の逃げる量を算定し、外皮面積で平均化します。

たとえば同じ延床面積100㎡の住宅でも、使用する断熱材の種類や厚さ、窓の面積、サッシやガラスの性能、住宅の形状などによってUA値は変わります。そのため、「断熱材を○mm入れれば水準B」と単純に決められるものではありません。

特に東京ゼロエミ住宅では、水準CのUA値0.60から、水準Bでは0.46、水準Aでは0.35まで性能を高める必要があります。水準Aの0.35はかなり高い断熱性能です。東京都が制度検討時に示したモデル住宅でも、戸建住宅でUA値0.35を実現する例として、高性能断熱材や熱貫流率1.3W/㎡K程度の高性能窓などを組み合わせた仕様が示されています。ただし、これはあくまでモデル例であり、同じ仕様を使えばすべての建物が0.35になるわけではありません。建物形状や開口部面積などを含め、案件ごとに計算が必要です。

UA値が基準に届かない場合はどこを見直すのがベストか(保存版)

省エネ計算を行った結果、希望する水準のUA値に届かなかった場合、まず確認したいのが外皮の中で熱損失が大きくなっている部分です。

たとえば水準Bを目標としている住宅でUA値が0.48だった場合、わずか0.02ですが基準の0.46以下には適合しません。このような場合に住宅全体の仕様を一から変更する必要があるとは限らず、窓や断熱材など効果の大きい部分から調整します。

見直す項目主な対応
窓サッシ・ガラスの性能を上げる
窓面積大きな開口部の面積や配置を見直す
外壁断熱材の種類や厚さを変更する
屋根・天井断熱性能を高める
床・基礎床断熱・基礎断熱仕様を再検討する
玄関ドアより断熱性能の高い製品へ変更する
熱橋等納まりを含めて断熱計画を確認する

特に窓は外壁などと比較して熱が逃げやすいため、UA値を改善するときに大きなポイントになります。ただし、高性能窓へ変更すれば当然コストも上がります。そこで実務では、窓だけを極端に高性能化するのではなく、壁・屋根・床などとのバランスを見ながら目標値へ近づけていきます。

設計がほぼ完成した段階でUA値が不足していることが分かると、建具表、矩計図、仕様書、見積まで変更になることがあります。そのため東京ゼロエミ住宅を予定している案件では、実施設計がすべて完成してから計算するのではなく、断熱仕様と開口部がある程度決まった段階で一度計算しておくことをおすすめします。

設備の省エネ計算では何を入力するのか

UA値が住宅の「器」の性能を評価するのに対し、一次エネルギー消費量計算では住宅で使用する設備の性能を評価します。
住宅版のエネルギー消費性能計算プログラムでは、地域区分や床面積、外皮性能などに加えて、暖房、冷房、換気、給湯、照明などの設備仕様を入力し、設計した住宅の一次エネルギー消費量を算定します。建築研究所は、この住宅版WEBプログラムと算定方法を公開しています。

東京ゼロエミ住宅では、この計算結果を利用して設備の省エネルギー性能を確認します。東京都の指針では、暖房・冷房・換気・照明・給湯等から算定した設計側のエネルギー消費量を基準側のエネルギー消費量と比較するBEI_ZEによって評価する方法が定められています。

したがって、計算を開始するためには少なくとも、住宅の規模や間取りだけでなく、ある程度の設備仕様が決まっている必要があります。「エアコンは後で施主が選ぶ」「給湯器の品番はまだ決まっていない」という状態では、正確な計算や申請用資料の作成が進めにくくなることがあります。

BEI_ZEは数字が小さいほど省エネ性能が高い

BEIは、簡単に説明すると「基準となる住宅のエネルギー消費量に対して、設計した住宅がどの程度のエネルギーを使うか」を表す指標です。1.0より小さくなるほど、基準よりエネルギー消費量が少ないことを意味します。

東京ゼロエミ住宅の水準Cで求められる戸建住宅の30%削減は、おおむねBEI_ZE 0.70以下、水準Bの40%削減は0.60以下、水準Aの45%削減は0.55以下という関係になります。なお、東京ゼロエミ住宅で示される削減率は再生可能エネルギーを除いた値です。太陽光発電を大量に搭載して発電量で不足分を相殺すれば、設備性能が低くても水準Aになる、という考え方ではありません。

これは設計実務ではかなり重要なポイントです。太陽光発電は現在の東京ゼロエミ住宅で別途重要な要件ですが、水準A・B・Cの設備省エネ性能そのものは、基本的に暖冷房や給湯などの効率を高めて達成する必要があります。

BEI_ZEが基準に届かないときは設備仕様を見直す

外皮性能が目標に達していても、一次エネルギー消費量が基準に届かないケースがあります。その場合は設備側の仕様を確認します。
特に影響が大きくなりやすいのが、暖冷房設備と給湯設備です。住宅の条件によって差はありますが、高効率なエアコンやヒートポンプ給湯器などへ変更することで一次エネルギー消費量を改善できる場合があります。換気方式や照明計画、節湯設備なども計算結果に関係します。

ここで注意したいのが、単純に「一番高性能な設備へ変更すればよい」と考えないことです。実務では、変更によるBEI_ZEへの効果と設備コストを比較しながら調整します。たとえば水準Bの0.60に対して計算結果が0.61であれば、大幅な仕様変更ではなく、一部設備の性能を見直すだけで適合する可能性があります。

逆に0.70前後から水準Aの0.55を目指すのであれば、設備を一つ変更するだけでは難しく、断熱性能を含めて住宅全体の省エネ計画を再検討する必要が出てくることもあります。

水準C・B・Aでは設計の考え方がかなり違います

水準C・B・Aは、単純に同じ住宅の断熱材を少しずつ厚くすれば順番に適合するというものではありません。特に水準Aを狙う場合には、初期設計からその水準を前提にしたほうが進めやすくなります。

水準CではUA値0.60以下、設備の削減率30%以上であり、ZEH水準相当の断熱性能を基本とした水準です。一方、水準BではUA値0.46以下まで断熱性能を高める必要があり、水準Aでは0.35以下が求められます。東京都も、現在の水準CをZEH水準相当、水準B・Aをそれより高い断熱・省エネ性能として位置付けています。

そのため、水準Cを前提に設計した住宅を着工直前になって「助成額が大きいから水準Aへ変更したい」と考えると、断熱材だけでなく窓、納まり、設備、見積まで大幅に見直す可能性があります。どの水準を狙うのかは、できるだけ基本設計の段階で決めておくことが重要です。

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水準Cには省エネ計算を使わない「仕様規定」もあります

東京ゼロエミ住宅では、必ずすべての住宅についてUA値と一次エネルギー消費量を一から計算しなければならないわけではありません。現在の制度では、水準Cについては一定の条件のもとで「仕様規定」を利用できる仕組みがあります。東京都の2026年度リーフレットでも、水準Cに限って省エネ計算が不要となる仕様規定の基準があることが案内されています。

断熱性能については国の誘導仕様基準を準用する仕組みが設けられており、一定の断熱材や開口部仕様などに適合することで、水準C相当の外皮性能として評価できるルートがあります。また、制度改正により、外皮を仕様規定、設備を性能計算とする、いわゆる「たすき掛け」の評価方法も設けられています。

ただし、水準Bや水準Aを取得する場合は性能規定による評価が必要です。また、水準Cであっても、設計の自由度や採用する設備によっては性能計算を行ったほうが進めやすい場合があります。「水準Cだから計算不要」と一律に判断せず、建物の仕様を確認したうえで評価方法を選ぶ必要があります。

太陽光発電を設置すれば水準が上がるわけではない

現在の東京ゼロエミ住宅では、再生可能エネルギー利用設備の導入も重要な認証要件です。東京都の2026年度案内では、太陽光発電システム、太陽熱利用システム、地中熱利用システムのいずれかを導入することが示されています。

ただし先ほど説明したとおり、水準A・B・Cを判定する設備の省エネ削減率は「再エネ除く」で評価されます。つまり、太陽光発電を設置したからBEI_ZEが自動的に水準Aになるということではありません。

この点は施主への説明でも誤解されやすい部分です。「太陽光をたくさん載せれば一番上の水準になる」という制度ではなく、まず住宅そのものの断熱性能と設備性能を高め、そのうえで再生可能エネルギー設備を導入するという考え方です。

省エネ計算を始めるために必要な図面と情報まとめ

東京ゼロエミ住宅の省エネ計算を外注する場合、「何を渡せば計算できますか?」という質問もよくあります。案件によって必要資料は異なりますが、少なくとも建物形状、外皮仕様、開口部、設備仕様を判断できる資料が必要です。

資料・情報主に確認する内容
平面図床面積、室用途、開口部、設備位置
立面図外皮形状、窓・ドア
矩計図・断面図壁・屋根・床・基礎の断熱仕様
建具表サッシ、ガラス、玄関ドアの性能
仕上表・仕様書断熱材の種類・厚さ
空調仕様エアコン等の性能
換気仕様換気方式、換気設備
給湯仕様給湯器の種類・性能
照明計画照明設備の仕様
太陽光等再エネ設備の計画

初回計算の段階ですべてのメーカーや品番まで確定していない場合でも、想定仕様で一度計算し、必要な性能を確認してから実際の製品を選定する進め方もあります。ただし申請時には、計算書と設計図書の仕様を合わせる必要があります。

東京ゼロエミ住宅で多いのは「計算ミス」より「図面との不整合」です

東京ゼロエミ住宅の申請で注意したいのは、計算結果そのものだけではありません。実務では、計算書と図面の仕様が一致していないことが手戻りの原因になります。

たとえば省エネ計算では高性能な窓を入力しているのに建具表は旧仕様のまま、WEBプログラムではヒートポンプ給湯器を入力しているのに設備図には別の給湯器が記載されている、といったケースです。計算上は水準Aに適合していても、申請図面との整合が取れていなければ修正が必要になります。

特に計算後に設計変更が発生した場合は注意が必要です。窓の大きさや種類、断熱材、空調、給湯設備などを変更すると計算結果へ影響する可能性があります。変更内容によっては再計算し、東京ゼロエミ住宅の水準を維持できるか確認する必要があります。

そのため、計算担当者へ一度図面を渡して終わりにするのではなく、設計変更が発生したときに情報を共有できる体制を作っておくことが大切です。

どの水準を狙うかは計算前に相談すべきです

東京ゼロエミ住宅では水準によって住宅建設費への助成額も異なります。2026年度は戸建住宅の場合、水準Cが40万円、水準Bが160万円、水準Aが240万円、集合住宅等ではそれぞれ30万円、130万円、200万円となっています。

そのため「せっかくなら水準Aを取りたい」と考える建築主もいますが、助成額だけで水準を決めるのはおすすめできません。水準を上げるために必要となる窓、断熱材、設備等の追加費用や、設計変更の範囲も考える必要があります。

実務では、現在の仕様で一度省エネ計算を行い、「Cならそのまま適合する」「Bなら窓の変更で届く可能性がある」「Aの場合は外皮と設備を大きく変更する必要がある」といった形で比較すると判断しやすくなります。

東京ゼロエミ住宅の省エネ計算は、認証のためだけに行う数字合わせではありません。設計の早い段階で計算することで、どの仕様にお金をかければ効率的に性能を高められるのかを判断する材料にもなります。

東京ゼロエミ住宅の計算は「設計が完成してから」では遅いです

東京ゼロエミ住宅の案件で一番避けたいのは、実施設計、見積、設備選定までほぼ完了してから初めて省エネ計算を行い、希望水準に届かないことが判明するケースです。

そこから窓を変更すれば建具表や見積を変更し、断熱材を変更すれば矩計図や仕様書を修正し、設備を変更すれば設備図や見積にも影響します。さらに確認申請や発注まで進んでいれば、設計者だけでなく施工会社や施主にも負担が広がります。

東京ゼロエミ住宅を利用することが決まった時点で目標水準を設定し、設計途中で一度計算する。その結果を見ながら仕様を調整し、設計が固まった段階で最終計算と図面整合を行う。この進め方が、最も手戻りを減らしやすい方法です。

2026年4月1日以降に設計確認審査を申請する案件については、東京都が令和8年度施行の最新指針・様式を公開しています。東京ゼロエミ住宅の制度は改正されることがあるため、過去案件の基準や書類をそのまま使わず、申請時点の最新制度を確認することも忘れないようにしましょう。

東京ゼロエミ住宅の省エネ計算・申請もお任せください

東京ゼロエミ住宅について「水準A・B・Cのどこまで狙えるか分からない」「現在の断熱・設備仕様で基準を満たすか確認したい」「計算から申請までまとめてお願いしたい」といったご相談にも対応しています。弊社では東京ゼロエミ住宅の省エネ計算のみ、申請書類作成のみ、省エネ計算から申請まで一括でのご依頼が可能です。設計途中の案件でも、現在の図面・仕様を確認しながら必要な計算や仕様調整をご案内します。

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