東京ゼロエミ住宅「水準C」の基準とは?性能規定・仕様規定の違いも解説

2026.10.17 東京ゼロエミ住宅

このコラムをざっくり解説

東京ゼロエミ住宅の「水準C」は、水準A・B・Cの3段階のうち基本となる水準です。性能規定で申請する場合は、戸建住宅・集合住宅等ともにUA値0.60以下、BEI_ZE0.70以下が必要です。一方、水準Cには省エネ計算を行わず、断熱材・窓・設備などの仕様で基準適合を確認する「仕様規定」も用意されています。ただし、設備の仕様規定を利用できるのは戸建住宅に限られ、集合住宅等では設備性能の計算が必要です。弊社では、設計内容を確認したうえで、性能規定と仕様規定のどちらが申請しやすいかを判断し、必要な省エネ計算・設計確認図書の作成まで対応しています。

東京ゼロエミ住宅「水準C」はどんな基準なのか

現在の東京ゼロエミ住宅は、水準C・水準B・水準Aの3段階に分かれており、水準Cはその中で基本となる水準です。水準B・Aになるほど断熱性能と設備の省エネ性能が高くなりますが、水準Cだから一般的な省エネ住宅と同じというわけではありません。

性能規定で水準Cを取得する場合、断熱性能はUA値0.60W/㎡・K以下、設備の省エネ性能は戸建住宅・集合住宅等ともにBEI_ZE0.70以下が求められます。東京都では、水準CをZEH相当の断熱性能を持ち、国の省エネ基準から再エネを除いて30%以上一次エネルギー消費量を削減する水準として設定しています。

水準A・Bとの違いを整理すると次のようになります。

水準UA値戸建住宅のBEI_ZE集合住宅等のBEI_ZE
水準A0.35以下0.55以下0.60以下
水準B0.46以下0.60以下0.65以下
水準C0.60以下0.70以下0.70以下

弊社へご相談いただく案件でも、「まず東京ゼロエミ住宅の認証を取りたい」「水準A・Bまで仕様を上げる予定はない」という場合には、水準Cから検討することが多くあります。ただし、水準Cには「性能規定」と「仕様規定」という2つの確認方法があるため、最初にどちらを利用するか整理しておくことが重要です。

水準Cには「性能規定」と「仕様規定」がある

水準Cで一番特徴的なのが、性能規定と仕様規定のどちらかを選べることです。水準A・Bは基本的に性能計算によって適合を確認しますが、水準Cについては一定の仕様を採用することで、住宅全体のUA値を計算せずに断熱性能への適合を確認できる仕組みがあります。

性能規定は、住宅ごとに外皮性能を計算し、UA値0.60以下であることを確認します。設備についても一次エネルギー消費量を計算し、BEI_ZE0.70以下であることを確認します。

一方、仕様規定では、屋根・天井・外壁・床・基礎・窓などについて定められた断熱仕様を採用し、各部位が基準を満たしているかを確認します。東京都の断熱性能に関する仕様規定は、国の誘導仕様基準を準用しており、UA値0.60程度に相当する仕様になっています。

つまり、水準Cだから必ず省エネ計算をする必要があるわけではありません。住宅の仕様によっては、仕様規定を使うことで計算作業を省略できます。

性能規定ならUA値0.60以下を計算で確認する

性能規定を利用する場合は、外皮性能計算を行って住宅全体のUA値を求めます。水準Cの基準はUA値0.60以下です。この方法のメリットは、建物全体で性能を調整できることです。

例えば、玄関ドアの断熱性能を少し抑える代わりに外壁や屋根の断熱性能を上げる、南側に大きな窓を設ける代わりにほかの窓の性能を高くするといった調整ができます。東京都の手引でも、性能規定では部位間のトレードオフによって基準を満たすことが可能とされています。

弊社でも、意匠上どうしても残したい窓がある住宅や、断熱仕様が一部だけ仕様規定から外れる住宅については、性能計算を行った方が進めやすいケースがあります。

仕様規定は各部位がそれぞれ決められた仕様を満たす必要がありますが、性能規定であれば住宅全体としてUA値0.60以下になればよいため、設計自由度を確保しやすいのがメリットです。

性能規定ではBEI_ZE0.70以下も必要

性能規定で水準Cを取得する場合、断熱性能だけではなく設備の省エネ性能も確認します。戸建住宅・集合住宅等ともにBEI_ZE0.70以下が基準です。

BEI_ZEは、国が定める基準となる一次エネルギー消費量に対し、設計した住宅がどの程度のエネルギーを使用するかを表す指標です。水準Cでは再生可能エネルギーを除いて30%以上削減する性能が必要になります。

計算には暖冷房、換気、給湯、照明などの設備条件が関係します。そのため、外皮計算でUA値0.60以下になっていても、設備条件によってBEI_ZEが0.70を超えれば水準Cへ適合できません。

東京ゼロエミ住宅のご相談で「断熱はZEH仕様なので水準Cになりますよね」と聞かれることがありますが、性能規定の場合は断熱だけで判断しません。設備性能まで含めて確認する必要があります。

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仕様規定ならUA値を計算しなくても水準Cを達成できる

仕様規定の一番大きなメリットは、外皮性能について住宅全体のUA値を計算しなくても基準への適合を確認できることです。屋根、外壁、床、窓などについて、決められた断熱材や熱抵抗値、開口部性能などを満たしていることを確認します。

設計者からすると、標準仕様を多く採用している戸建住宅では使いやすい方法です。例えば工務店で断熱材、サッシ、玄関ドアなどを標準化し、その仕様が東京ゼロエミ住宅の仕様規定を満たしていれば、案件ごとに毎回外皮計算を行う必要がなくなる場合があります。

ただし、「仕様規定=何も計算しなくてよい」という意味ではありません。使用する断熱材の種類や厚さ、窓・玄関ドアの性能、設備の仕様などが、それぞれ定められた要件を満たしていることを図面やメーカー資料から確認できる状態にする必要があります。

弊社で仕様規定による申請図書を作成する場合も、矩計図に断熱材の種類・厚さが記載されているか、建具表から窓性能が確認できるか、設備表に必要な性能が記載されているかを確認します。計算書が少なくなる分、図面から仕様を確認できる状態にしておくことが重要です。

仕様規定と性能規定はどちらが簡単なのか

これは設計によって変わります。
標準的な住宅で、断熱材・窓・設備が仕様規定を満たしているのであれば、仕様規定の方が計算作業を減らせるため進めやすいことがあります。一方、仕様規定から一部外れる建材を使いたい、窓面積が大きい、建物形状が複雑、設備の選択肢を広くしたいという場合は、性能規定の方が設計しやすいことがあります。

比較仕様規定性能規定
外皮のUA値計算原則不要必要
設計自由度決められた仕様に合わせる全体性能で調整しやすい
断熱材・窓各部位で基準を確認UA値全体で確認
設備戸建住宅は仕様規定を利用可能BEI_ZEを計算
水準水準Cのみ水準A・B・C
向いているケース標準仕様が決まっている住宅設計自由度を残したい住宅

弊社では「仕様規定の方が簡単だから必ず仕様規定」という判断はしていません。図面を確認した時点で、一部の仕様が基準から外れているのであれば、無理に仕様を変更するより性能計算をした方が早い場合もあります。

水準Cでは「たすき掛け」もできる

水準Cでは、外皮について仕様規定を利用し、設備について性能規定で計算する方法も選べます。東京都ではこの組み合わせを、いわゆる「たすき掛け」として認めています。

例えば断熱材や窓については国の誘導仕様基準に沿った標準仕様を採用しているものの、設備については仕様規定に合わない機器を使用したい場合があります。この場合、外皮は仕様規定で確認し、設備は一次エネルギー消費量を計算してBEI_ZE0.70以下を確認する方法が考えられます。

水準A・Bではこのような仕様規定との組み合わせはできません。水準Cだからこそ利用できる方法です。
設計者としては、「すべて仕様規定」か「すべて性能計算」の二択だと思わず、現在の住宅仕様に合わせて評価方法を組み合わせられることを覚えておくと便利です。

集合住宅では設備の仕様規定は使えない

集合住宅や長屋の場合は少し注意が必要です。外皮の断熱性能については、単位住戸ごとに水準Cの仕様規定または性能規定を選択できます。一方、設備の省エネルギー性能については集合住宅等で仕様規定を利用することができないため、性能規定で確認する必要があります。東京都の認証制度Q&Aでも、この扱いが明確にされています。

つまり、集合住宅で外皮の仕様規定を使ったとしても、それだけで水準Cへの適合確認が終わるわけではありません。設備側は一次エネルギー消費量を計算し、BEI_ZE0.70以下であることを確認します。

共同住宅の東京ゼロエミ住宅をご相談いただく場合は、戸建住宅と同じ感覚で「仕様規定なら計算不要」と考えないように注意が必要です。

仕様規定なら必ず申請が早いとは限らない

仕様規定を使えば計算が減るため、申請も必ず早くなると思われることがあります。ただ、実務ではそうとも限りません。

例えば仕様規定に適合させるため、すでに決まっているサッシや断熱材を変更しなければならないのであれば、図面や見積もりの修正が必要になります。この場合、現在の仕様のまま性能計算をした方が早く終わることがあります。

また、仕様規定では各部位がそれぞれの条件を満たしている必要があります。性能規定のように「外壁が少し弱い分を屋根で補う」といった全体調整は基本的にできません。

そのため弊社では、すでに設計が進んでいる案件については、最初に現在の断熱材・窓・設備仕様を確認し、「そのまま仕様規定へ乗るのか」「性能計算した方が変更が少ないのか」を見てから進め方を決めています。

工務店の標準仕様があるなら仕様規定との相性を確認しておく

水準Cの仕様規定は、年間で複数棟を設計・施工する工務店にとって使いやすい仕組みです。
毎回使用する断熱材、サッシ、玄関ドア、エアコン、給湯器などがある程度決まっているのであれば、一度その標準仕様が東京ゼロエミ住宅の仕様規定へ適合するか確認しておくと、次の案件から判断が早くなります。

標準仕様の中に基準を満たしていないものがあれば、「東京ゼロエミ住宅を取得する案件だけこのサッシへ変更する」「給湯設備はこの機種以上にする」といった社内ルールを作ることもできます。

一棟ごとにゼロから仕様を確認するより、東京ゼロエミ住宅水準C用の標準仕様を一つ作っておく方が、設計・積算・現場への共有も簡単になります。

性能規定を選ぶなら実施設計途中で一度計算しておく

水準Cを性能規定で取得する場合は、水準A・Bと同じように、実施設計の途中で一度計算しておくことをおすすめしています。

水準CはUA値0.60以下なので、水準Aの0.35ほど厳しい基準ではありません。ただし、大きな開口部が多い住宅や断熱仕様によっては、0.60を超えることがあります。

設計確認直前でUA値0.63と分かれば、そこから断熱材や窓を変更し、建具表・矩計図・見積もりを修正しなければなりません。実施設計途中で分かれば、比較的小さな変更で対応できます。

設備についても同様です。BEI_ZE0.70に対して余裕があるかを早めに確認しておけば、設計の最後に給湯器や空調を変更するリスクを減らせます。

水準Cだから最後に計算すれば大丈夫と考えず、性能規定を利用する場合は設計中の確認として省エネ計算を使う方が安全です。

太陽光発電設備などの再エネ要件も忘れない

現在の水準A・B・Cのすべてについて、一定の例外を除き太陽光発電設備等の再生可能エネルギー利用設備を原則設置することが認証要件になっています。

水準Cだから再エネ設備が不要というわけではありません。

一方、BEI_ZEの計算では太陽光発電による削減分を算入しません。つまり、性能規定の場合はまず断熱・設備によってBEI_ZE0.70以下を満たし、そのうえで再エネ設備の設置要件も確認します。

設計の最後になって太陽光発電設備を追加しようとすると、屋根形状や設備配置との調整が必要になる場合があります。東京ゼロエミ住宅を取得することが決まっているのであれば、水準にかかわらず基本設計から再エネ設備の配置を考えておくことをおすすめします。

水準Cでも設計確認後の仕様変更には注意する

仕様規定でも性能規定でも、設計確認書が交付された後に断熱材・サッシ・設備を変更する場合は注意が必要です。
仕様規定の場合、変更後の商品が規定された性能を満たしているかを確認します。性能規定の場合は、変更内容によってUA値やBEI_ZEの再計算が必要になることがあります。東京都のQ&Aでも、間取り・換気方式・暖房・給湯設備などの大きな変更によってUA値やBEI_ZEを再計算しなければ適合を判断できない場合は、設計変更確認審査が必要になる例が示されています。

特に現場で「同等品へ変更しました」と言われた場合、そのまま進めず、東京ゼロエミ住宅の認証上問題がないか確認してから施工する方が安全です。

完了検査では、設計確認を受けた内容どおりに施工されているか確認されます。水準Cであっても、申請時だけ基準を満たしていればよいわけではありません。

水準Cは「一番低い水準」ではなく、申請方法を選びやすい水準

水準A・B・Cという名称を見ると、水準Cは単純に一番性能が低い水準と考えてしまいます。確かに性能値だけを比較すればA・Bより基準は緩やかですが、設計実務では「仕様規定を利用できる」という大きな特徴があります。

標準仕様が規定に合っている戸建住宅であれば、仕様規定によって計算作業を減らすことができます。一方、設計自由度を優先したい住宅では、性能規定を使ってUA値0.60以下、BEI_ZE0.70以下を確認できます。さらに、水準Cでは外皮を仕様規定、設備を性能規定とする方法も選べます。

つまり水準Cは、住宅の設計内容に合わせて申請方法を選びやすい水準です。

「とにかく仕様規定で進める」「とりあえず性能計算する」と決めるのではなく、現在の図面と仕様を見て、一番修正が少なく申請しやすいルートを選ぶことがポイントになります。

東京ゼロエミ住宅「水準C」の省エネ計算・申請代行をご相談ください

水準Cを検討しているものの、「性能規定と仕様規定のどちらを使えばよいか分からない」「現在の標準仕様が仕様規定を満たしているか確認したい」「UA値・BEI_ZEを計算して水準Cへ適合するか確認したい」といった段階でもご相談いただけます。

当社では、東京ゼロエミ住宅の水準A・B・Cについて、省エネ計算、仕様確認、基準を満たすための仕様検討、設計確認に必要な申請図書の作成まで対応しています。水準Cについては、現在の図面や断熱・設備仕様を確認し、仕様規定で進める方がよいのか、性能規定で計算する方がよいのかも含めて整理できます。

すでに実施設計が進んでいる案件でも問題ありません。「まず仕様規定が使えるか確認したい」「省エネ計算だけお願いしたい」「水準A・B・Cのどこまで取得できるか確認したい」といったご相談にも対応しています。東京ゼロエミ住宅の設計を進めている設計事務所・工務店の方は、現在お持ちの図面からお気軽にご相談ください。

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